薬草コラム — レシピ

5月、野苺のシンプルなジャムづくり

草苺(くさいちご)は、ちょうどネロリの花が香る5月に実をつける、とても美味しい野イチゴです。 木苺の仲間ですが、「草」と名の付く通り、大きな木にはならず、草のように足元に群生します(草寸20~60cmほど)。 本州、四国、九州の草むらなどで出会うことができます。   〈特徴と見つけ方〉   ・花 3~4月頃、草苺は5弁の白い花を咲かせます。 明るい緑色の葉っぱ(羽のような形をした、5枚の小葉たち)の中に咲く、直径3-4cmの白い花々をみつけたら、チェックしておきましょう! *日当たりの良い草むらの端っこ(ちょっと陰になっている木陰など)に多い印象です。 ・果実 花が終わると、5月に直径1-1.5cmほどの赤い実が熟します。同じ株から、毎日次々と、赤い実が熟す様子はワクワクします^^ 果実はあっさりとした甘みでジューシー、得も言われぬ繊細なよい香りがあります。 (ただし、茎や枝に細い刺があるので、採取の際は気を付けてくださいね!) - 動物たちにとっても貴重な食物のようで、うちの庭ではアナグマが美味しそうに食べている姿を見かけます🦡 この時期糸島では、もっと山の中にある「クマイチゴ」や、触感がラズベリーに近い「ナワシロイチゴ」、オレンジ色で甘い「モミジイチゴ」も(草苺に少し遅れて)実を付けますが、一番見つけやすくて美味なのは、やっぱり草苺!   〈草苺のシンプルジャム〉   草苺の良さを活かすなら… 一に、摘みたて!(摘んですぐに口に放りこんでほしい^^)、 二に、シンプルなジャム! 草苺は傷みやすいので、少しずつ集めて、ジャムにするまで冷凍しておきましょう。   【材料】 草苺(生または冷凍)適量 砂糖 草苺の重量の約40% レモン果汁 適量   【作り方】 1. 草苺の2/3を小鍋にいれ、砂糖を加え、全体を優しく馴染ませる。 2. 砂糖の浸透圧で果汁が出てきたら、弱火にかける。 3. 徐々に果汁が出てきたらレモン果汁を加え、中火にする。 4. かき混ぜながら、出てきたアクを丁寧にすくう。 5. 草苺の香りがたってきたら、残りの草苺1/3を加え、再び全体を優しくよく混ぜながら加熱する。(今回は触感を残すために分け入れました) 6. ジャムがふわふわと泡立ち、沸騰してきたら火を止め、アツアツのうちに滅菌したジャム瓶にそそぐ。 *加熱時間が長いと香りが飛び、のっぺりした印象のジャムになってしまいます。ぱっと強めに火を入れ、さっと完成させるのがポイント。 *ジャムは、パンやヨーグルトにも合いますが、炭酸水を注いで野イチゴソーダにするのもおすすめ^^ 美味しくできたら、ぜひ教えてくださいね^^   - suu - 薬草ハーバリスト 佐々木美帆    All rights reserved@suu2022 本文、レシピ、写真の無断転載、無断転用を禁止します。

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哀愁の香り - 金木犀と、金木犀のシロップ

【もくじ】   - 想い出の金木犀 - 秋の哀愁は、金木犀の哀愁なのかもしれない - 生薬としての金木犀 - 金木犀をいただく - suu -の金木犀シロップ レシピ ― 金木犀 (桂花)  Osmanthus fragrans var. aurantiacus  モクセイ科モクセイ属の常緑小高木。銀木犀の変種。  生薬名:金木犀  辛味・甘味 / 温性 ―   冬の枇杷(ビワ)の花、春の沈丁花(じんちょうげ)、初夏のネロリ。 そして秋の金木犀と銀木犀。 これが私の一番好きな四季の花の香りたち。   金木犀にまつわる、一番古い記憶は幼稚園の頃。 ピアノのレッスンの帰り道、この香りの正体を垣根の木の中にみつけて、 小さな秘密に出会ったような気持ちになったことを想い出します。   秋の哀愁は、金木犀の哀愁なのかもしれない   ところでみなさん、金木犀の実を見たことはありますか? ・・・ない、のではないでしょうか。   それもそのはず、金木犀は「雌雄異株(しゆういしゅ)」。 つまり、オスの木とメスの木が分かれている植物なのですが、 日本には庭木としてオスの木だけが入ってきたため、実をつけることがないのです。   どれだけ甘美な香りで人を、虫を、引き寄せても… その先の運命の人に出会うことが、日本では、できない…。 なんて切ない…。   もしかすると、そんな金木犀の哀愁が、香りの中にのっているのかもしれません。 10/14/2020 @ 福岡   では、どのように金木犀の木は増えているのか? 答えは簡単で、人による「挿木」です。 つまり、日本の野山には、野生の金木犀はないのです。(桜のソメイヨシノと似た感じですね)   金木犀の生まれ故郷、中国の山へいってみると、 メスの木もあって金木犀の実に出会えるようです... (会ってみたい)   会えぬならばと、写真で調べてみたところ、小さなオリーブのような実をつけていました。 (金木犀の英語名は、「フレグランス・オレンジカラード・オリーブ」、まさに!と言う感じです。)     生薬としての金木犀 金木犀の花は、薬膳材料や、生薬として用いられます。 香り成分である精油成分(オスマンやα-ツヨンなど)、有機酸(パルミチン酸、オレアノール酸、ステアリン酸)、ロウ成分(トリアコンタン、パラハイドロオキシフェネチルアルコール)などを含有しています。   効果  1. 胃腸から身体を元気にしてくれる   特徴のある香りを持ちますから、芳香性健胃作用(=香りで味覚や嗅覚を刺激し、唾液や胃液の分泌を増やし、胃腸の調子を整える効果)があります。 ふーっと香りで気を巡らせて、滞りを流すイメージ。 - suu -だと「星のよもぎ茶」、他の食材だと薄荷や山椒も。同じようなタイプです。   2. からだを温め痛みをとってくれる   よもぎと同様、温性の植物ですので、おなかをあたため、血の巡りもよくしてくれます。 冷えて血流が悪くなることによる痛みや、冷えの改善、不眠などにも役立ちます。 生理中にも良いので、私は毎月必ず「月のよもぎ茶」に金木犀を浮かべて飲んでいます。   (見た目的にも、効能的にも、味・香り的にも、相性がほんっとうによくて… とろけるような香りと味わいのお茶になります。全世界の女子に届けたいくらい!)   ③ 痰や咳にも効果があります。季節的にも、ぴったりですね。   ④ 民間療法では、濃い花茶をうがい薬として用いて、歯痛や口臭予防に使うこともあるようです。   金木犀をいただく 金木犀は、実は、素晴らしい”香りの食材”。   例えば… ・金木犀の花を白ワインに漬け込んで ”桂花陳酒”・ドライの金木犀と烏龍茶を混ぜて...

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知恵の粒、梅

  目次   梅の成分: ①有機酸 ②有機酸化合物(ムメフラール) ③ポリフェノール ④トリテルペノイド ⑤青酸配糖体   梅レシピ: 烏梅(うばい) 梅肉エキス   ー   コロナ渦中だった、今年の梅のシーズン。 そんな中でも、ありがたいことに ・福岡の友人のご実家でとれた、大粒の完熟梅 ・北陸に住む義両親の山でとれた、大粒の青梅 をいただき、今年も梅仕事をすることができました。(ありがとうございました!^^)   さぁ!と腕をまくり ・青梅 → 梅肉エキス ・完熟梅 → 梅ジュースと、梅干し ・エキス作りの残りの梅 -> カリカリ梅と梅シロップ を今年も無事、仕込むことができました。   梅の成分 梅とは、バラ科サクラ属の植物。 中国原産で、日本には弥生時代に入ってきたといわれています。 梅干しや梅酒など、日本の食卓と大変関わりの深い植物ですが、 意外に知られていないのは、その成分。 健康に良いと言われるけれど... 何が身体にいいんでしょう? 実は梅、 ・生なのか?加熱したのか? ・完熟なのか?青梅なのか? 状態によっても、成分が変わるんです。 今日は、意外に知らないその成分について、少し解説したいと思います(^^)   ① 有機酸 まず、梅といえば酸! 具体的には、クエン酸、りんご酸、酒石酸、ピルビン酸など。 梅に塩を加えると、梅果汁=梅酢、がとれることからも分かるように、梅には様々な酸が含まれます。 実が熟すに従い、酸は分解されていきますが、完熟したって、まだまだ酸っぱい。 すっぱい食べ物の代表ともいえる梅干しも、 作る過程ですっぱくなるのではなく、 もともと梅に含まれる有機酸(特にクエン酸)が酸味を与えています。 これらの有機酸は、わたしたちの体の中で、エネルギーを作り出す代謝システムの、大切なピースでもあります。 (昔、生物の授業で「クエン酸回路」とか習ったの、覚えてる方もいらっしゃるかな?) なので、これらのピースである有機酸を摂取することで、 その回路がよく回り、代謝が上がり、疲労回復にも役立つ、と言われるんですね。 また、有機酸はそれだけではなく、口から入って腸に届くと、 腸の蠕動(ぜんどう)運動を助け、お腹の調子も整えてくれます。   ② 有機酸化合物 (ムメフラール) 梅に含まれる有機酸ですが、実は加熱により、一部不思議な成分が作られます。 それが、有機酸化合物 のムメフラール。 数十年前にみつかった、血液をさらさらにする効果が示唆されている成分です。 梅果汁を加熱すると、その中の糖分から「ヒドロキシメチルフルフラール」という成分ができます。 それが有機酸と反応することで、ムメフラールが生成すると考えられています。 加熱してはじめて生じる成分なので、生梅や、梅ジュース、梅干しには含まれませんが、 後述する”梅肉エキス"にたっぷり含まれていることがわかっています。(出典) 梅をじっくり加熱するものといえば、梅肉エキスだけではなく、烏梅(うばい)もあり、どちらも痛み止めや滋養強壮に使われます。 (こちらも後述します) どちらも江戸時代から続く立派な民間薬。 どの成分がどう効いているのかは、明らかになってはいませんが、 もしかしたら、加熱の過程でムメフラールなどができ、それが関与しているのかな?とわたしは思っています。 また、風邪のひき始めや頭痛には、「梅干しを黒焼きして食せ」と言ったりしますね。 もしかしたら、梅干しも、加熱することで変化し、 ムメフラールなどの有効成分が生成されているのかもしれません。 ちなみにムメフラールの”ムメ”は、梅の学名、Prunus mume からきています。   ③ ポリフェノール 梅には、他の植物同様、たくさんのポリフェノールが含まれます。 例えば… ・ネオクロロゲン酸・クロロゲン酸などの ”ヒドロキシ桂皮酸”グループ ・リオニレシノール・シリンガレシノール・ピノレシノールなどの ”リグナン誘導体”グループ(別名:梅リグナン) など。 ポリフェノールといえば、抗酸化作用が有名ですが、 それ以外にも、梅ポリフェノール には、抗炎症、降血圧、消化管機能改善、脂質代謝改善、抗疲労、抗ウイルス、食後血糖値低下、防カビ、骨粗鬆症予防効果などが期待されています。 また、梅リグナンのリオニレシノールには、ピロリ菌抑制効果も示唆されています。 (なので、梅干しを食べると、ピロリ菌感染予防!と言われたりするんですね) ただ、これらのポリフェノール。...

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#野の草レシピ【野のたんぽぽシロップ】

  地面に咲く太陽、たんぽぽ。 今日はそんなたんぽぽのお花を使った、シロップをご紹介します。 みなさん、今日はどんな1日でしたか?糸島は久しぶりに暖かく、良いお天気で、幸せでした^^糸島に、お茶の発送をお手伝いしていただいている素敵な会社さんがあります。そちらのお庭は、お日様がよく当たる、無農薬ハーブガーデン。納品に伺ったら、ラベンダー、チェリーセージ、レモンマリーゴールドに、ローズゼラニウムふと足元をみたら、たんぽぽもあちこちで満開…!お好きなだけどうぞ☺️のお言葉に甘えて、ハーブ摘み...。今日は、急遽、ひとり野の草キッチン開講です。   たった5分でこれだけ..! ありがとうございました^^   今日作ったのは、【野のたんぽぽシロップ】。 夏蜜柑、レモンマリーゴルド、蜜柑の蜂蜜、たんぽぽ。 この順番で、香りと味わいが立ち上がる、幸せ色のシロップです。   気分が明るくなる色!   奥がたんぽぽ、手前がレモンマリーゴールド レシピ用意するもの水 100cc程度砂糖やはちみつ 適量 (今回ははちみつ大匙6くらい)夏みかん 1個くらい香りのハーブ ひとつかみ (今回はレモン・マリーゴールド) ※なくてもOK 、代わりにレモンバーベナやミント、レモングラス、ローズマリーなどお好みのハーブも使えます作り方1. たんぽぽの花を摘みとる   ポイントは、摘みたてを使うこと!あっという間にシュンとなってしまいます 2. さっと洗って、水を丁寧に拭き取る   3. 花びらだけを集める   4. 小鍋に水を入れ、湯を沸かす。砂糖を加え、甘く熱い砂糖水を作る (※1)   5. そこへ、香りのハーブを加える (一度ハーブをきゅっとにぎって、香りを立たせてから入れるとよい)   6. 一旦火を止め、5分程度蒸らし、砂糖水にハーブの香りを移す (※2)   7.その間に、夏みかんを絞っておく   8. 砂糖水にハーブの香りがうつったら、ハーブを取り出す   9. そこへ夏みかんの果汁を加え、再度弱火にかける (※3)   手絞りのジューサーです、何だかお気に入り   10. たんぽぽの花弁をふわっと加え、さらっと混ぜて、ひと煮立ちしたら火を止める (アクが出たらすくう)   11. あついうちに清潔な瓶に注ぎ入れる Your browser does not support our video. 以上で、完成です!炭酸で割っても、お湯で割っても、ジンとソーダで割ってカクテルにしても美味しいですよ^^(※1) 糖度と糖の種類は、用途と好みに合わせてください。さらりと飲み終えるシロップにするならば甘さ控えめ、長期保存したりジャム様にするならばしっかりと加糖してください。(※2) 香りがどのくらいで移るかは、ハーブの状態や種類によります。えぐみが出ない良い瞬間を見極めながら.. 薫って、味見して、やってみてね。(※3) 柑橘を入れることでシロップが酸性になり、腐敗しにくく、また色鮮やかになります。果汁を後入れするのはビタミンと柑橘の風味が壊れにくいように。最後、ひと煮立ちさせるのは腐敗しないようにです。   シロップって、実は便利な “中間地点”。   ここから、自由に、様々なところへとわたしたちを連れて行ってくれます。   例えば...   ・シロップを、少しとろっとするまで煮詰めたら、パンケーキ・シロップ   ・ペクチンを加えて煮詰めたら、コンフィチュール リンゴの皮や、柑橘の皮や種から、ペクチンを抽出し加えてください。 (参考: https://recipe.rakuten.co.jp/recipe/1530004592/) 市販のペクチン粉を使う場合は、(9)で加えてください。 刻んだ果実を入れて火入れしてもいいですね! ・熱が取れたシロップに、生蜂蜜を大匙1程度加え、毎日かき混ぜつつ常温で1週間程度、または、時折かき混ぜつつ冷蔵庫で数ヶ月ほど置くと、発酵してしゅわしゅわシロップ(※)   になります。 梅ジュースを作って置いておいたら、気付いたら発酵して、微炭酸!あれ、やや梅酒?! となった経験ありませんか?あれを意図的に美味しく作る感覚です。   - (※) このような発酵シロップ、特に野草を使った発酵シロップを、‐ suu ‐では#銀河シロップ...

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