そんな中でも、ありがたいことに
・福岡の友人のご実家でとれた、大粒の完熟梅
・北陸に住む義両親の山でとれた、大粒の青梅
をいただき、今年も梅仕事をすることができました。(ありがとうございました!^^)
さぁ!と腕をまくり
・青梅 → 梅肉エキス
・完熟梅 → 梅ジュースと、梅干し
・エキス作りの残りの梅 -> カリカリ梅と梅シロップ
を今年も無事、仕込むことができました。
梅の成分
梅とは、バラ科サクラ属の植物。
中国原産で、日本には弥生時代に入ってきたといわれています。
梅干しや梅酒など、日本の食卓と大変関わりの深い植物ですが、
意外に知られていないのは、その成分。
健康に良いと言われるけれど...
何が身体にいいんでしょう?
実は梅、
・生なのか?加熱したのか?
・完熟なのか?青梅なのか?
状態によっても、成分が変わるんです。
今日は、意外に知らないその成分について、少し解説したいと思います(^^)
① 有機酸
まず、梅といえば酸!
具体的には、クエン酸、りんご酸、酒石酸、ピルビン酸など。
梅に塩を加えると、梅果汁=梅酢、がとれることからも分かるように、梅には様々な酸が含まれます。
実が熟すに従い、酸は分解されていきますが、完熟したって、まだまだ酸っぱい。
すっぱい食べ物の代表ともいえる梅干しも、
作る過程ですっぱくなるのではなく、
もともと梅に含まれる有機酸(特にクエン酸)が酸味を与えています。
これらの有機酸は、わたしたちの体の中で、エネルギーを作り出す代謝システムの、大切なピースでもあります。 (昔、生物の授業で「クエン酸回路」とか習ったの、覚えてる方もいらっしゃるかな?)
なので、これらのピースである有機酸を摂取することで、
その回路がよく回り、代謝が上がり、疲労回復にも役立つ、と言われるんですね。
また、有機酸はそれだけではなく、口から入って腸に届くと、
腸の蠕動(ぜんどう)運動を助け、お腹の調子も整えてくれます。
② 有機酸化合物 (ムメフラール)
梅に含まれる有機酸ですが、実は加熱により、一部不思議な成分が作られます。
それが、有機酸化合物 のムメフラール。
数十年前にみつかった、血液をさらさらにする効果が示唆されている成分です。
梅果汁を加熱すると、その中の糖分から「ヒドロキシメチルフルフラール」という成分ができます。
それが有機酸と反応することで、ムメフラールが生成すると考えられています。
加熱してはじめて生じる成分なので、生梅や、梅ジュース、梅干しには含まれませんが、
後述する”梅肉エキス"にたっぷり含まれていることがわかっています。(出典)
梅をじっくり加熱するものといえば、梅肉エキスだけではなく、烏梅(うばい)もあり、どちらも痛み止めや滋養強壮に使われます。
(こちらも後述します)
どちらも江戸時代から続く立派な民間薬。
どの成分がどう効いているのかは、明らかになってはいませんが、
もしかしたら、加熱の過程でムメフラールなどができ、それが関与しているのかな?とわたしは思っています。
また、風邪のひき始めや頭痛には、「梅干しを黒焼きして食せ」と言ったりしますね。
もしかしたら、梅干しも、加熱することで変化し、
ムメフラールなどの有効成分が生成されているのかもしれません。
ちなみにムメフラールの”ムメ”は、梅の学名、Prunus mume からきています。
③ ポリフェノール
梅には、他の植物同様、たくさんのポリフェノールが含まれます。
例えば…
・ネオクロロゲン酸・クロロゲン酸などの ”ヒドロキシ桂皮酸”グループ
・リオニレシノール・シリンガレシノール・ピノレシノールなどの ”リグナン誘導体”グループ(別名:梅リグナン)
など。
ポリフェノールといえば、抗酸化作用が有名ですが、
それ以外にも、梅ポリフェノール には、抗炎症、降血圧、消化管機能改善、脂質代謝改善、抗疲労、抗ウイルス、食後血糖値低下、防カビ、骨粗鬆症予防効果などが期待されています。
また、梅リグナンのリオニレシノールには、ピロリ菌抑制効果も示唆されています。
(なので、梅干しを食べると、ピロリ菌感染予防!と言われたりするんですね)
ただ、これらのポリフェノール。
青梅ほど多く、加工によっても成分変化を起こすそう。
梅酒や梅干しに加工する過程で減少するし、
梅肉エキスにはほとんど含まれないとか。
となると、ポリフェノール の効果を期待したい場合は、
非加熱の青梅シロップなんかが良いのかもしれませんね!
一言で梅といっても、シーンによって、うまく使い分けられたら良いですね(^^ (出典)
④ トリテルペノイド
④はマニアックなのでさらっといきます!
a) オレアノール酸、ウルソール酸
いわゆる、フィトケミカル!
どちらも抗がん、抗炎症、血糖値上昇抑制、抗高脂血症、抗菌作用を示します。
オレアノール酸は、なんと筋力維持と増加、脂肪燃焼にも寄与します。
(そしてこれ、ブドウ表面に見られる白い粉の正体でもあります)
ウルソール酸はリンゴやローズマリーなど様々なハーブ類に含まれるので、名前を聞いたことがあるかもしれません。
こちらは食べると言うよりも、外用でつかったときに、UVダメージによる、お肌のコラーゲン修復をしてくれることで有名です。
b) α、βアミリン
それぞれウルソール酸とオレアノール酸の前駆体(=変化する前の物質)です。
抗炎症作用などが認められています。
c) シクロアルテノール類
米糠などにも含まれるトリペルテンアルコールで、
コレステロール上昇抑制効果、血中脂質改善などが期待されています。
⑤ 青酸配糖体 (アミグダリン)
生の青梅は毒、と言われる由縁。
「クンクン… 口元からアーモンド臭がする、青酸カリだな」という事件現場の探偵シーン(?!)でおなじみ(?)の、青酸を含む成分です。
その毒性は昔から知られていて、「梅食うとも核(さね)食うな、中に天神寝てござる」という古いことわざまであります。
*ただ、どんな成分も、量によって毒にも薬にもなります。
青酸配糖体も、ごく微量だと、”毒で毒を制す”ように、薬となったりするのだろうな、と私は理解しています。
アミグダリンは、他のバラ科の植物同様、梅の種に多く含まれますが、
アルコール・塩・砂糖などに漬け込むことで加水分解され無毒化されます。
この分解の過程で生じるのがベンズアルデヒド(=アーモンド様の香り)ですが、これには鎮痛・鎮静効果があります。
私はモヤモヤすると、自家製梅干しの壺を開けてクンクンしちゃうのですが…
もしかしたらベンズアルデヒドが、わたしを鎮静してくれているのかもしれません(笑)
−−−
…と、以上が梅の成分ハイライトでした(^^)
最後に、烏梅についてと、梅肉エキスのレシピをご紹介します。
烏梅(うばい)
こちら、何かわかりますか?