薬草コラム — 薬草暮らし
バラ科のはなし - 五芒星の花 -
突然ですが、先日、インスタグラムで植物クイズを出してみました。
【 桜 桃 梅 薔薇 ハマナス 枇杷(びわ) 野いちご 林檎 】
これらは全て、次のお茶のブレンド内容なのですが… さて、これらの植物に共通することは、何でしょうか?
💡ヒント:よもぎには共通しません🌿
あなたは、正解がわかりましたか?^^
(↑季節のよもぎ茶・春謳 - はるうたう - /4月末日発売予定)
答えは... 「すべてバラ科の植物」であること!
バラや桜はなんとなく分かるとしても... ビワや林檎は、初めて知った!という方も多いのではないでしょうか。
せっかくなので、少し、バラ科の話をしてみますね。
☑︎ バラ科は、90属2500種を含む植物の科の一つ。
桜・梅・桃・バラ・ビワ・リンゴ以外にも ✔︎ あんず ✔︎ 梨 ✔︎ さくらんぼ ✔︎ いちご ✔︎ カリン ✔︎ スモモ など…
実は、身近なフルーツの多くはバラ科に属します。
珍しいところだと、
✔︎ アーモンド
もバラ科!
(ちなみにナッツと一言で言っても、・ピーナッツはマメ科、・ヘーゼルナッツはカバノキ科、・マカダミアナッツはヤマモガシ科、・くるみやピーカンナッツはクルミ科、・カシューナッツやピスタチオはウルシ科です。)
バラ科の特徴は、5枚の花弁をもつこと。
つまり、五芒星(ごぼうせい)、星型のお花。
確かに思い返してみれば 桜も5枚ですし、梅も5枚ですよね^^
(↑梅)
(↑桃)
(↑桜)
(↑野苺(草苺))
(↑ノイバラ)
では、八重桜や、八重桃、八重のバラは?というと 実はおしべやめしべが変化して(!) 花びらへと変貌したもので 多くは園芸種です。
不思議ですよね。
(↑八重桜/園芸種)
(↑八重の桃/園芸種)
八重咲きのイメージのあるバラも、
野生の和バラであるハマナスや、原種のドッグローズの花びらは5枚です。
(美しいので、画像検索してみてください^^)
☑︎ それ以外にも…
・薬膳でよく登場する「山楂(さんざし)」 ・植木でよく見る白い「コデマリ」や「雪柳」、黄色い「山吹」(糸島では4月の今まさに咲いていますね) ・北海道の街路樹の定番「ナナカマド」 ・カリンに似た植物、ボケ
などもバラ科の植物。
(↑わかりにくいですが、やや右寄りの中央の赤い花がボケ(木瓜)。ちなみに白い花は桜、紫はレンゲで、手前の蕾と左の大きな花はサザンカです) ・・・
目が合ったお花の花びらを数えてみたり
何科に属するのか調べてみたり
その科の特性を勉強してみると
とても面白い!
初めて見る植物と出会っても、
なんとなく「**科かな?」なんて予想をつけることもできます。
ぜひやってみてくださいね^^
- suu -
5月、野苺のシンプルなジャムづくり
草苺(くさいちご)は、ちょうどネロリの花が香る5月に実をつける、とても美味しい野イチゴです。
木苺の仲間ですが、「草」と名の付く通り、大きな木にはならず、草のように足元に群生します(草寸20~60cmほど)。
本州、四国、九州の草むらなどで出会うことができます。
〈特徴と見つけ方〉
・花
3~4月頃、草苺は5弁の白い花を咲かせます。
明るい緑色の葉っぱ(羽のような形をした、5枚の小葉たち)の中に咲く、直径3-4cmの白い花々をみつけたら、チェックしておきましょう!
*日当たりの良い草むらの端っこ(ちょっと陰になっている木陰など)に多い印象です。
・果実
花が終わると、5月に直径1-1.5cmほどの赤い実が熟します。同じ株から、毎日次々と、赤い実が熟す様子はワクワクします^^
果実はあっさりとした甘みでジューシー、得も言われぬ繊細なよい香りがあります。
(ただし、茎や枝に細い刺があるので、採取の際は気を付けてくださいね!)
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動物たちにとっても貴重な食物のようで、うちの庭ではアナグマが美味しそうに食べている姿を見かけます🦡
この時期糸島では、もっと山の中にある「クマイチゴ」や、触感がラズベリーに近い「ナワシロイチゴ」、オレンジ色で甘い「モミジイチゴ」も(草苺に少し遅れて)実を付けますが、一番見つけやすくて美味なのは、やっぱり草苺!
〈草苺のシンプルジャム〉
草苺の良さを活かすなら…
一に、摘みたて!(摘んですぐに口に放りこんでほしい^^)、
二に、シンプルなジャム!
草苺は傷みやすいので、少しずつ集めて、ジャムにするまで冷凍しておきましょう。
【材料】
草苺(生または冷凍)適量
砂糖 草苺の重量の約40%
レモン果汁 適量
【作り方】
1. 草苺の2/3を小鍋にいれ、砂糖を加え、全体を優しく馴染ませる。
2. 砂糖の浸透圧で果汁が出てきたら、弱火にかける。
3. 徐々に果汁が出てきたらレモン果汁を加え、中火にする。
4. かき混ぜながら、出てきたアクを丁寧にすくう。
5. 草苺の香りがたってきたら、残りの草苺1/3を加え、再び全体を優しくよく混ぜながら加熱する。(今回は触感を残すために分け入れました)
6. ジャムがふわふわと泡立ち、沸騰してきたら火を止め、アツアツのうちに滅菌したジャム瓶にそそぐ。
*加熱時間が長いと香りが飛び、のっぺりした印象のジャムになってしまいます。ぱっと強めに火を入れ、さっと完成させるのがポイント。
*ジャムは、パンやヨーグルトにも合いますが、炭酸水を注いで野イチゴソーダにするのもおすすめ^^
美味しくできたら、ぜひ教えてくださいね^^
- suu - 薬草ハーバリスト
佐々木美帆
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哀愁の香り - 金木犀と、金木犀のシロップ
【もくじ】 - 想い出の金木犀 - 秋の哀愁は、金木犀の哀愁なのかもしれない - 生薬としての金木犀 - 金木犀をいただく - suu -の金木犀シロップ レシピ ― 金木犀 (桂花) Osmanthus fragrans var. aurantiacus モクセイ科モクセイ属の常緑小高木。銀木犀の変種。 生薬名:金木犀 辛味・甘味 / 温性 ― 冬の枇杷(ビワ)の花、春の沈丁花(じんちょうげ)、初夏のネロリ。 そして秋の金木犀と銀木犀。 これが私の一番好きな四季の花の香りたち。 金木犀にまつわる、一番古い記憶は幼稚園の頃。 ピアノのレッスンの帰り道、この香りの正体を垣根の木の中にみつけて、 小さな秘密に出会ったような気持ちになったことを想い出します。 秋の哀愁は、金木犀の哀愁なのかもしれない ところでみなさん、金木犀の実を見たことはありますか? ・・・ない、のではないでしょうか。 それもそのはず、金木犀は「雌雄異株(しゆういしゅ)」。 つまり、オスの木とメスの木が分かれている植物なのですが、 日本には庭木としてオスの木だけが入ってきたため、実をつけることがないのです。 どれだけ甘美な香りで人を、虫を、引き寄せても… その先の運命の人に出会うことが、日本では、できない…。 なんて切ない…。 もしかすると、そんな金木犀の哀愁が、香りの中にのっているのかもしれません。 10/14/2020 @ 福岡 では、どのように金木犀の木は増えているのか? 答えは簡単で、人による「挿木」です。 つまり、日本の野山には、野生の金木犀はないのです。(桜のソメイヨシノと似た感じですね) 金木犀の生まれ故郷、中国の山へいってみると、 メスの木もあって金木犀の実に出会えるようです... (会ってみたい) 会えぬならばと、写真で調べてみたところ、小さなオリーブのような実をつけていました。 (金木犀の英語名は、「フレグランス・オレンジカラード・オリーブ」、まさに!と言う感じです。) 生薬としての金木犀 金木犀の花は、薬膳材料や、生薬として用いられます。 香り成分である精油成分(オスマンやα-ツヨンなど)、有機酸(パルミチン酸、オレアノール酸、ステアリン酸)、ロウ成分(トリアコンタン、パラハイドロオキシフェネチルアルコール)などを含有しています。 効果 1. 胃腸から身体を元気にしてくれる 特徴のある香りを持ちますから、芳香性健胃作用(=香りで味覚や嗅覚を刺激し、唾液や胃液の分泌を増やし、胃腸の調子を整える効果)があります。 ふーっと香りで気を巡らせて、滞りを流すイメージ。 - suu -だと「星のよもぎ茶」、他の食材だと薄荷や山椒も。同じようなタイプです。 2. からだを温め痛みをとってくれる よもぎと同様、温性の植物ですので、おなかをあたため、血の巡りもよくしてくれます。 冷えて血流が悪くなることによる痛みや、冷えの改善、不眠などにも役立ちます。 生理中にも良いので、私は毎月必ず「月のよもぎ茶」に金木犀を浮かべて飲んでいます。 (見た目的にも、効能的にも、味・香り的にも、相性がほんっとうによくて… とろけるような香りと味わいのお茶になります。全世界の女子に届けたいくらい!) ③ 痰や咳にも効果があります。季節的にも、ぴったりですね。 ④ 民間療法では、濃い花茶をうがい薬として用いて、歯痛や口臭予防に使うこともあるようです。 金木犀をいただく 金木犀は、実は、素晴らしい”香りの食材”。 例えば… ・金木犀の花を白ワインに漬け込んで ”桂花陳酒”・ドライの金木犀と烏龍茶を混ぜて...
知恵の粒、梅
目次 梅の成分: ①有機酸 ②有機酸化合物(ムメフラール) ③ポリフェノール ④トリテルペノイド ⑤青酸配糖体 梅レシピ: 烏梅(うばい) 梅肉エキス ー コロナ渦中だった、今年の梅のシーズン。 そんな中でも、ありがたいことに ・福岡の友人のご実家でとれた、大粒の完熟梅 ・北陸に住む義両親の山でとれた、大粒の青梅 をいただき、今年も梅仕事をすることができました。(ありがとうございました!^^) さぁ!と腕をまくり ・青梅 → 梅肉エキス ・完熟梅 → 梅ジュースと、梅干し ・エキス作りの残りの梅 -> カリカリ梅と梅シロップ を今年も無事、仕込むことができました。 梅の成分 梅とは、バラ科サクラ属の植物。 中国原産で、日本には弥生時代に入ってきたといわれています。 梅干しや梅酒など、日本の食卓と大変関わりの深い植物ですが、 意外に知られていないのは、その成分。 健康に良いと言われるけれど... 何が身体にいいんでしょう? 実は梅、 ・生なのか?加熱したのか? ・完熟なのか?青梅なのか? 状態によっても、成分が変わるんです。 今日は、意外に知らないその成分について、少し解説したいと思います(^^) ① 有機酸 まず、梅といえば酸! 具体的には、クエン酸、りんご酸、酒石酸、ピルビン酸など。 梅に塩を加えると、梅果汁=梅酢、がとれることからも分かるように、梅には様々な酸が含まれます。 実が熟すに従い、酸は分解されていきますが、完熟したって、まだまだ酸っぱい。 すっぱい食べ物の代表ともいえる梅干しも、 作る過程ですっぱくなるのではなく、 もともと梅に含まれる有機酸(特にクエン酸)が酸味を与えています。 これらの有機酸は、わたしたちの体の中で、エネルギーを作り出す代謝システムの、大切なピースでもあります。 (昔、生物の授業で「クエン酸回路」とか習ったの、覚えてる方もいらっしゃるかな?) なので、これらのピースである有機酸を摂取することで、 その回路がよく回り、代謝が上がり、疲労回復にも役立つ、と言われるんですね。 また、有機酸はそれだけではなく、口から入って腸に届くと、 腸の蠕動(ぜんどう)運動を助け、お腹の調子も整えてくれます。 ② 有機酸化合物 (ムメフラール) 梅に含まれる有機酸ですが、実は加熱により、一部不思議な成分が作られます。 それが、有機酸化合物 のムメフラール。 数十年前にみつかった、血液をさらさらにする効果が示唆されている成分です。 梅果汁を加熱すると、その中の糖分から「ヒドロキシメチルフルフラール」という成分ができます。 それが有機酸と反応することで、ムメフラールが生成すると考えられています。 加熱してはじめて生じる成分なので、生梅や、梅ジュース、梅干しには含まれませんが、 後述する”梅肉エキス"にたっぷり含まれていることがわかっています。(出典) 梅をじっくり加熱するものといえば、梅肉エキスだけではなく、烏梅(うばい)もあり、どちらも痛み止めや滋養強壮に使われます。 (こちらも後述します) どちらも江戸時代から続く立派な民間薬。 どの成分がどう効いているのかは、明らかになってはいませんが、 もしかしたら、加熱の過程でムメフラールなどができ、それが関与しているのかな?とわたしは思っています。 また、風邪のひき始めや頭痛には、「梅干しを黒焼きして食せ」と言ったりしますね。 もしかしたら、梅干しも、加熱することで変化し、 ムメフラールなどの有効成分が生成されているのかもしれません。 ちなみにムメフラールの”ムメ”は、梅の学名、Prunus mume からきています。 ③ ポリフェノール 梅には、他の植物同様、たくさんのポリフェノールが含まれます。 例えば… ・ネオクロロゲン酸・クロロゲン酸などの ”ヒドロキシ桂皮酸”グループ ・リオニレシノール・シリンガレシノール・ピノレシノールなどの ”リグナン誘導体”グループ(別名:梅リグナン) など。 ポリフェノールといえば、抗酸化作用が有名ですが、 それ以外にも、梅ポリフェノール には、抗炎症、降血圧、消化管機能改善、脂質代謝改善、抗疲労、抗ウイルス、食後血糖値低下、防カビ、骨粗鬆症予防効果などが期待されています。 また、梅リグナンのリオニレシノールには、ピロリ菌抑制効果も示唆されています。 (なので、梅干しを食べると、ピロリ菌感染予防!と言われたりするんですね) ただ、これらのポリフェノール。...