【もくじ】
- 想い出の金木犀
- 秋の哀愁は、金木犀の哀愁なのかもしれない
- 生薬としての金木犀
- 金木犀をいただく
- suu -の金木犀シロップ レシピ
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金木犀 (桂花)
Osmanthus fragrans var. aurantiacus
モクセイ科モクセイ属の常緑小高木。銀木犀の変種。
生薬名:金木犀
辛味・甘味 / 温性
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冬の枇杷(ビワ)の花、春の沈丁花(じんちょうげ)、初夏のネロリ。
そして秋の金木犀と銀木犀。
これが私の一番好きな四季の花の香りたち。
金木犀にまつわる、一番古い記憶は幼稚園の頃。
ピアノのレッスンの帰り道、この香りの正体を垣根の木の中にみつけて、
小さな秘密に出会ったような気持ちになったことを想い出します。
秋の哀愁は、金木犀の哀愁なのかもしれない
ところでみなさん、金木犀の実を見たことはありますか?
・・・ない、のではないでしょうか。
それもそのはず、金木犀は「雌雄異株(しゆういしゅ)」。
つまり、オスの木とメスの木が分かれている植物なのですが、
日本には庭木としてオスの木だけが入ってきたため、実をつけることがないのです。
どれだけ甘美な香りで人を、虫を、引き寄せても…
その先の運命の人に出会うことが、日本では、できない…。
なんて切ない…。
もしかすると、そんな金木犀の哀愁が、香りの中にのっているのかもしれません。
では、どのように金木犀の木は増えているのか?
答えは簡単で、人による「挿木」です。
つまり、日本の野山には、野生の金木犀はないのです。(桜のソメイヨシノと似た感じですね)
金木犀の生まれ故郷、中国の山へいってみると、
メスの木もあって金木犀の実に出会えるようです... (会ってみたい)
会えぬならばと、写真で調べてみたところ、小さなオリーブのような実をつけていました。
(金木犀の英語名は、「フレグランス・オレンジカラード・オリーブ」、まさに!と言う感じです。)
生薬としての金木犀
金木犀の花は、薬膳材料や、生薬として用いられます。
香り成分である精油成分(オスマンやα-ツヨンなど)、有機酸(パルミチン酸、オレアノール酸、ステアリン酸)、ロウ成分(トリアコンタン、パラハイドロオキシフェネチルアルコール)などを含有しています。
効果
1. 胃腸から身体を元気にしてくれる
特徴のある香りを持ちますから、芳香性健胃作用(=香りで味覚や嗅覚を刺激し、唾液や胃液の分泌を増やし、胃腸の調子を整える効果)があります。
ふーっと香りで気を巡らせて、滞りを流すイメージ。
- suu -だと「星のよもぎ茶」、他の食材だと薄荷や山椒も。同じようなタイプです。
2. からだを温め痛みをとってくれる
よもぎと同様、温性の植物ですので、おなかをあたため、血の巡りもよくしてくれます。
冷えて血流が悪くなることによる痛みや、冷えの改善、不眠などにも役立ちます。
生理中にも良いので、私は毎月必ず「月のよもぎ茶」に金木犀を浮かべて飲んでいます。
(見た目的にも、効能的にも、味・香り的にも、相性がほんっとうによくて… とろけるような香りと味わいのお茶になります。全世界の女子に届けたいくらい!)
③ 痰や咳にも効果があります。季節的にも、ぴったりですね。
④ 民間療法では、濃い花茶をうがい薬として用いて、歯痛や口臭予防に使うこともあるようです。
金木犀をいただく
金木犀は、実は、素晴らしい”香りの食材”。
例えば…
・金木犀の花を白ワインに漬け込んで ”桂花陳酒”・ドライの金木犀と烏龍茶を混ぜて ”桂花烏龍茶”
・蜂蜜とお花をご飯に炊き込んで ”蜂蜜桂花飯”
・金木犀をシロップにして ”桂花醤” など…
中でも金木犀シロップは、一度食べたら忘れられない味。
毎年欠かせない、わたしにとって最も愛おしい秋仕事です。
わずか10日ほどしか咲かない。
途中で雨が降ったら、それで終わりー。
だからこそ、誰しもが一度は考えたことがあるのではないでしょうか?
「金木犀の香りを、もう少し長く、閉じ込められたらいいのに…」
金木犀のシロップは、そんな願いを叶えてくれます^^
- suu -の金木犀シロップ レシピ
材料:
・水 300cc・グラニュー糖 300cc
・開花したての金木犀の花 両手のひらいっぱい
・レモン果汁 大匙1
作り方:
1. 秋の風を注意深く観察し、金木犀が開くタイミングを見計らう
2. 開花した!と思ったら、その日の午前中のうちに、優しく花だけを摘みとる
(*この時に、茎やガクを入れないように。よく観察し、虫がいない花をつかう。)
3. ざるにあげ、小さなごみをふるい落とす
4. 水にくぐらせ、さっと洗う
5. お鍋に水と砂糖を入れ、砂糖液をつくる
6. 沸騰したら弱火にし、花を入れる
7. 優しくよくかき混ぜながら、1分程度弱火で加熱し、レモン果汁を加える
8. 火を止め、かき混ぜを続けながら、余熱で香りと色を砂糖液へ移しとっていく
9. シロップの荒熱がとれたら、上澄とともに花だけ一度取り出す
(花は全て浮くので取り出しやすい)
10. シロップ部分をコーヒーフィルターで濾す
(細かな不純物を取り除き、透明で美しいシロップにする)
11. シロップと花を再びあわせ、一瞬再加熱。熱いうちに、煮沸消毒した瓶へ入れる。
12. 完成!^^
使い方:
・ヨーグルトにひと匙かけて
・豆花(トーファー)や白玉やフルーツにかけて
・ゼリーにして
・ソーダで割って
・よもぎ茶にたらして
・そのまま、スプーンでぱくっ
作るのには、タイミングと根気と丁寧さが必要ですが...
ぜひみなさんとも共有したい、幸せな花しごとです。
いつかぜひ、作ってみてくださいね^^
- suu - | 薬草ハーバリスト
Miho