薬草コラム

霧と山 - ネムノキ

あまりに美しくてどうして良いか分からない霧の日だった。 ネムノキ。 終わり終わりの最期の花の時期。 霧深い森の中で出逢うと さながら、淡い紅色の妖精が降りてきたよう。 ネムノキ マメ科ネムノキ属 その名は、夜になると葉が閉じる 「就眠運動」に由来 中国においては、夫婦円満の象徴 樹皮と葉は 「合歓」という精神安定の生薬 よく歌に詠まれる花は 不思議な甘い香り、 でも転写できない香り、 浸すとじんわり水を朱色へと染める花。 今はいろんな技術が発達しているから 無理矢理にでも香りを閉じ込めたり ケミカリーに復元したり ちいさなプラスチック粒子をつかうことで長く香らせることもできるけれども そうしないのが心地よい、 そうしないのが敬意な気がする Your browser does not support our video.  風が吹くと木は、まるで呼吸するみたいに下から上へとゆっくりとふうわり膨らみ枝葉を鳴らす。それはもう何もまるで敵わない美しさ山と木と私しかいないところでそんな薫り、こんな姿を目の前にするともう息をするのを忘れてしまうか、この感動を一粒だって逃すまいと目を閉じて深呼吸をするかの、二つに一つ良かったら、音を出して、山の音、聴いてみてくださいOn one beautiful, almost unforgettable misty day in the woods, I met flowering Nemunoki -. Nemunoki, means “sleeping tree.” Its leaves slowly close during night time... Please turn the sound on- hope I can share some beauty of mountain with you.

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赤い宝石、ヤマモモ

田植えの時期だというのに雨がなく心配していた糸島にも、梅雨がやってきようです。そんな安堵の雨つぶが落ちるほんの数日前、滑り込みで、旬のヤマモモを拾いにいってきました。 ヤマモモ、わたしはこの複雑な果実に、いたく魅力を感じます。まず、ぎゅうっと甘く、ぎゅうっと酸っぱい。その勢いの良い喉ごしが、とても心地よい。そして、そのドンとした見た目以上にジューシーで、噛みしめると果汁がこぼれる。味わいは、苺のようなフルーティーさ、そして裏側に、じわりと不思議な松やにの風味。その普段馴染みのない風味が、じゃくり、と口のなかで潰れていく果実の粒子の小気味良い感触とあいまって、とてもクセになり、他の果実では味わえない感動をくれるのです。 さて、今年はどうしよう、どう遊びましょう、あれやこれやと妄想を巡らせながらのヤマモモ拾い。今年は例年より、すこし少なめです。とにもかくにも先ずは、毎年恒例の山桃の赤ワイン煮。ゆっくりアクをすくいながら、重めのワインでとろとろ煮詰め、深く真っ赤なシロップに。 松の香りがするからか、針葉樹系ハーブであるジュニパーベリーがしっかり香る個性強めのジンとも合わせたくなりました。今、これを書きながら、ちびりちびりと飲んでいます。 ヤマモモには、おそらく、園芸種なのであろう大粒のもの(2-3cm~)と、野生種に近いのであろう小粒のもの(1-2cm)があります。よく見かけるのは、後者でしょうか。木の下に、なにやら赤黒いものがたくさん落ちていたら、観察してみましょう。今の時期ならばヤマモモかもしれません^^(少し前なら、それはきっと桑の実ですね)庭木に多いので、ヤマモモがお庭に生えている(ありがたい)お友達を探しましょう!そしてピクニックシートをもっていって、木の下にひかせてもらって木に登って、ゆさゆさと枝を揺らして、ぽとぽと落ちるヤマモモを、ルンルンと拾いましょう。ヤマモモは、木肌もつるりとしていて、枝分かれもちょうどよく、するする登りやすくて好きな木。 そのまま木の下で、ピクニックなんかも、いいですね^^

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満月を描く - 平成最後の、満月に寄せて -

どうやってお茶をつくるのかと尋ねられるけれど、 “円を描く”のです、としかいいようがない。   たとえるならばヨガに少し似ている、 ポーズは、自分の中の照準みたいなものを合わせていく作業だから。 ただただ内に向かって、追い求めてゆく作業。   お茶も同じ、 よもぎと向き合う、呼応し合うように焙煎する、ごくごく少しずつ、 選別し、和える、 湯を注ぐ、その瞬間昇り立つ香りから、順繰りにやってくる様々なる味わい、舌触り、滑らかさ、甘み、色、 これらがひとつの点から始まって、わたしのなかでぐるり円を描いていく。 まるで、今宵のうつくしい満月のような、そんな円を。   口に含んだときに感じる欠け、余剰なふくらみあれば、まぁるくまるく、一筆書きのように滑らかでおおらかな円になるまで、 焙煎、選別、調合を繰り返し、わたしのなかでぐるうりと円を描いていく。   調合は毎回違う、よもぎの表情にあわせてゆくから。   なんども満月を描きたくなるような、そんな月に出逢うことはそうそうない。   ただ和えるだけでお茶はつくれるけれども、 満月にはならない、 だから- suu -は寡作、たくさんの種類はない、 でも出逢ったらそれは運命、 だから作り続ける。   なぜお茶をつくるのかとも尋ねられる、 それは、 それは、呼応するため。   あなたのなかの宇宙と呼応する、そんな満月を描くため。

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山椿と山茶花の、珊瑚色シロップ

一重で、すこし、控えめに咲く山椿。 そして、遠くからでも、その彩りを教えてくれる、山茶花。 どちらも、冬を彩り、桜へのバトンタッチする頃まで、長く私たちを楽しませてくれる花々。   花弁の色も、赤・ピンク・紋入りから、白や黄色まで。 古来から愛されていることもあり、地域特有の種や、園芸品種も多いですね。   椿と山茶花がなかったら、きっと日本の冬はもっと寂しい色合いだったことでしょう。 たくさんの野の花たち。椿、山茶花、木瓜、桜、菜の花、蓮華、菫... 椿と山茶花   椿と山茶花は、どちらもツバキ科ツバキ属の常緑広葉樹です。   両者ともに身近だけれども、 実は見て楽しみ、唄って楽しみ、生垣となるだけではなく、 油を与えてくれ、お茶にもなり、そして、お花をいただくこともできるのです。   お茶にすることについては、緑茶の木である、茶の木(チャノキ)も、ツバキ科ツバキ属と知れば納得。 ただし、椿や山茶花のお茶の味わいは、お茶と違って大層あっさりです。   また、椿の花は、「山茶(さんちゃ)」と呼ばれる生薬で、開花直前のものを天日干ししたものを煎じ、滋養強壮、健胃、整腸に用います。 生葉は、生汁を擦り傷や切り傷に使うこともできます。   椿と山茶花の違いは、植物構造や、生存戦略から見れば多々ありますが、 わかりやすい違いは、花の散り方。 "椿は花ごと"ぽとりと落ち、"山茶花は花びらがぱらぱら"と落ちていきます。   散りゆく間も、その木の下を、それぞれの風合いで彩ってくれます。     そんな山椿と山茶花で、 珊瑚色の美しいジャムとシロップ、そしてゼリーを作りました。 奥がジャム、手前がシロップ。   Your browser does not support our video. 思わず、ため息が漏れる美しさと、愛おしさ。   レシピ 八分咲きくらいの、山椿や山茶花のお花をいただきます。(もっとも見つけやすいのは、ご自宅の庭でしょうか。その場合は一年を通じ、除草剤等がまかれていないことをご確認ください。) その花弁のみをとりわけ、たっぷりのお湯でさっと湯がきます。 ゆがいたら、冷水にとり、最低でも30分は水にさらします。これを、2回ほど、繰り返します。 お鍋に、お好みの分量の水と、お好みの分量のお好みの砂糖類を加え火にかけ、溶かしていきます。(アバウトでごめんなさい!でも、どんな分量でも作れるんです。少なかったら後から足せるので、少なめからやってみてくださいね。花弁が少なくてもシロップに色味は出ます。お花が多いとそれだけ色も濃くなり、具沢山で贅沢な感じに。) そのお鍋に、水を切った花びらを加えます。 加熱しながら、酸を加えてゆきます。クエン酸でも、レモン果汁でも、レモンスライスでも、他の柑橘でも。特に量に決まりはありませんが、写真のようなくすんだ紫から、はっきりとした赤やピンクに発色するまで加えます。味見をしながら、少しずつ。個人的には、甘みがキュッと引き締まるくらいが好きです。 軽く煮立たせながら、全体をなじませます。アクが浮いてきたら丁寧にすくいましょう。 シロップだったらこれで完成!ジャムにしたい場合は、ペクチンや、ペクチンを含有する林檎の皮などを入れながら、好みの濃さと質感になるまで煮詰めてください。花弁や糖分が多い場合は、ペクチンを入れなくてもトロリとします。 ゆがいているところ。色がさっと暗くなりますが、大丈夫!酸を加えれば、戻ります。 酸を加えると、花弁も、シロップ部分も、嘘みたいに綺麗に発色します! 同じ要領で、椿や山茶花の、ピクルスも作れます。 しっかりアク抜きをしたら、三杯酢などに漬け込むだけ。この場合も、くすんだ色味があっという間に美しく発色します! 花弁のほろ苦さと、その肉厚な食感を楽しめます。 ちょっとした、彩りとお口直しに。 まるごと、天ぷらでいただくのも、素敵です。 おっと、忘れていました! ゼリー^^ ちょうど、糸島の海で拾った天草を使って、寒天を作った残りがあったので、今回はそれを使って。   普通の寒天パウダーを使う場合は、 寒天 1g お水+椿と山茶花のシロップ 250cc くらいの割合が良さそうです。 寒天は、火にかける前にしっかり水となじませてください。 甘さはシロップの甘み次第で調節してくださいね。   椿と山茶花シロップは、微細な香りと味わいなので、 クランベリージュースなどを足しても良いかもしれません。   トッピングには、椿の花粉を。   椿も山茶花も、日本原産の植物。   椿にはCamellia japonica(カメリア・ジャポニカ) 、山茶花にはCamellia sasanqua (カメリア・サザンカ)という学名がついています。   昔は、山茶花もまとめて、椿とよんでいたようです。 (万葉集にも、椿はたくさん登場します。)   もういよいよ、椿も、山茶花も終盤ですね。 ですが、散りゆく彼女たちを最後、すこし違った目線で見てみてはいかがでしょうか?   「たべる」、とくに花をいただくということは、一見 欲のある行いに見えるかもしれません。   でも、それを通じて得られる気持ちの中にはきっと、 今まで気づいていなかった自然への愛おしさや感謝、偉大さへの敬意、 そして自分と自然との繋がりへの気づきのようなものがあると信じています。 (そして、自然の中で自分の自然体にもどると、取りすぎる、ということもしなくなります。)   普段、あなたが、身近に自然を感じる生活をしていなくても。...

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